先生の意識のばらつきに対応するために

先生の意識のばらつきに対応するために

本記事は、2019年9月15日「未来の先生展」のセミナーでお話しした内容について、スライドで話した具体的なことも知りたい!というお声を受け、記事化したものです。

セミナーでは、以下3点についてお話しました。
1)計画の立て方のポイントとは
2)意識のばらつきへ対応するために
3)生徒へどう関わるか

今回は2)について、ダイジェスト版でお伝えします。

運営体制づくりにあたってのあるある悩み

晴れて計画を立て終えたら、次に学年のメンバーと計画を共有して、実行に移していくことになります。実行していくにあたっての悩みでよく言われるのは「運営体制づくりについて」の悩みです。

例えば
・プランを共有しても足並みがそろわない
・探究に懐疑的
・先生によって意識やモチベーションにバラつき
・指導経験の違い
などのお悩みを、よく伺います。

探究活動の運営においてあるある悩み

学年のメンバーに探究活動を行う意義を伝えたにも関わらず、具体的な計画を共有すると、(あからさまに反対する人こそいないものの)微妙そうだったり、不安そうな面持ちの人が少なくなく、会議室で重い空気が …。。

辛いですよね。皆様のところでも心当たりがあるでしょうか。

なぜ人は新しいことに前向きに動こうとしないのか

先生方が一致団結して一枚岩になるために、まずは、なぜ不安だったり、微妙な空気になるのか、について紐解いていきましょう。

まず押さえておきたいのは、「そもそも人間は、変化を嫌う生き物だ」ということです。
新しいことを提示されたときに、人間は不安や恐れ、しんどさなどを感じて、ネガティブな反応をするのが普通であり、それが自然な反応なのだと思います。

ただ、そのネガティブに同調していても前に進みません。
新しいことを提示されたときに、テコでも動こうとしない、という人もいますが、変革する意義はわかるので変えていきたい、という人も必ずいます。また一方で、意欲があっても何かの理由で動き出せない、という人もいます。
この局面でのポイントは、「意欲がある人」または「意欲はあるけど何かの理由で動き出せない人」からアプローチしていくということです。
時間もエネルギーも有限なので、テコでも動かない難しい人に向き合って疲弊するよりも、最も効果的な人からアプローチして、一人ずつ味方を増やしていった方が、効率よく進めていきやすくなるのではないでしょうか。

意欲があるけど動き出せないのはなぜ?

それでは、「意欲があるけれど動き出せない人たち」は、何が原因で動けないのでしょうか?それは、以下2つの大きなメンタルブロックが原因かもしれません。

●探究をやったことがない、経験したことがないので不安(イメージもわかない …)
●自分が指導できるかが不安

ここで、このメンタルブロックを外すために、おもしろい取組みをされている山梨県立高校のH先生の実践例をご紹介します。H先生は、探究活動を中核で推進するリーダーです。
校内で探究活動を推進するにあたり、校内にはびこる探究活動に対する前向きではない空気感をなんとかしたくて、あることを思いつきました。

ある日、H先生は「校内の課題について話し合いをしたいので、会議の時間を自分主導で進めさせてほしい」と申し出ました。
そして会議の日、H先生は、集まった学年の先生にこんなことを伝えました。

「今日は学校内での課題について、みなさんと話し合いをしたいんです。テーブルにある付せんに、それぞれ感じている学校内での課題を書き出してみてもらえませんか。」

参加している先生は思い思いに付せんに自分が感じている校内の課題を書き出していきました。生徒指導のことから、行事のこと、設備面のこと、さまざまなことが出てきます。
次に書き出した付箋をグルーピングしてもらい、各々話し合いたいテーマを選んでもらいました。そして、グループにわかれて、その問題がなぜ起こっているのか、チームで話し合うように促しました。
そして、さまざまな意見が出尽くしたところで、どうしていけばいいのかアイデアを考えるように伝え、みんなでブレインストーミングをしていきました。

…と、ここまで先生方と進めてきて、H先生は学年メンバーに投げかけました。
「みなさん、今何をやってきたかわかりますか?実はこれが探究活動なんですよ」

“え!?なんだ、探究ってこういうこと?”
“というか、普段からやってるじゃないか。”

そんな声が次々に出て、(一気に探究活動に対する心理的なハードルが下がり)自分たちにもできるんじゃないか、という空気が生まれたそうです。
中には、「みんなでこうやって意見出し合って進めていくのって、結構おもしろい!」と感じられた先生がおり、このワーク後から、積極的に探究活動に取り組んでくれるようになったそうです。

そう。探究活動、と聞くと、何か得体の知れない壮大な何かをしなくてはならないと思ってしまう方もいるようです。しかし、決してそうでなはく、探究活動は日常でも誰しもがやっていることのはずです。

例えば、自分の授業がうまくいかなかったとき。
例えば、今までやっていた体育祭の運営体制を新しく変えようというとき。

「よりよくするためには、どうすればよいか?」という課題設定をして、ベテランの先生にアドバイスをもらいに行ったり、他校の実践事例を探してみたり、自分たちなりにアイデアをブレストしてみたり…そうやって、情報収集しているはずです。
そして集まった情報をもとに、目の前の生徒の実情に合わせて情報を整理しながら、意思決定をしているのではないでしょうか。

これはまさに、探究プロセスを回していると言えるのです。

実は普段から探究活動をしてる?

探究活動に対する心理的ハードルを下げるために、「実は探究は、日ごろからやっていたことだと自覚化させる」ことが有効だ、という事例をお伝えしました。

もう一つの心理的な壁の存在とは

先程の行動で、「なーんだ、探究活動って自分でも日ごろからやっていたことだったんだ」と心理的ハードルを下げたことで、動き出せる先生がいます。しかし、それでも動き出せない先生もいます。
次にここの違いの原因は何なのか。について考えていきたいと思います。

動き出せない先生の根底に、こんな気持ちがあるかもしれません。
・生徒に質問、相談されて、わからなかったら、どうしよう…
・失敗したくない…

なぜこのような気持ちがわいてしまうのかというと、
「自分が教え導かねばならない。」という気持ちを持っているからではないでしょうか。

先生のスタンスで大切なこと

しかし、探究活動では、教え導くteachingスタイルではなく、「生徒といっしょに考え、サポート・伴走する存在」としてのファシリテーションスタイルが求められます。
そう、別に自分がすべてわかっている必要もないし、いっしょに考えながら伴走すればよいのです。探究活動においては、先生方のスタンス転換が非常に重要になってきます。

ここで、先生方のスタンスについて、印象的なお話をされていた、2名の先生のお話を共有させて頂きます。

まず1人目は、神奈川県の私立中高一貫校の探究担当O先生のお話です。

探究活動先生のスタンス事例1

次に、2人目は、岡山県立高校で10年以上探究活動に取り組まれてきたN先生のお話です。

探究活動先生のスタンス事例2

この2名の先生方が言われるように、探究活動を進める上で、非常に重要なのが、先生方のスタンス転換です。

・×教え導かねば⇒〇生徒といっしょに考えながら、やっていけばいい
・×失敗したくない⇒〇うまくいかなかったことから学べばいい

このようなスタンス転換をはかること。わからなくていいから、まずはやってみること。それを促してあげることがとても大切なことなのではないでしょうか。

具体的な進め方のイメージを提示できることも大切

先生方が一致団結して一枚岩になるため、雑に投げるのではなく、先生方に具体的な進め方のイメージまで提示してあげることが大切です。
上述した生徒の場合と異なり、先生方にとにかくまずやってみよう、と促すだけではただの根性論になってしまう可能性があるためです。

ここで、ある京都の学校の事例をご紹介させてください。
S先生は、学年主任兼探究活動の推進リーダーです。探究活動に対して、メンバーが気持ちよく動き出せるようにするために、どうしたらよいだろうかを考えたところ、大きく2つの取り組みをすることにしました。
・具体的な進め方のイメージをすり合わせる時間を毎時間ごと設定する
→具体的に何をやればいいか、各先生方がイメージをつけてスムーズに動き出せるように、工夫
・その時間に、前回の授業で、各先生のよかった点をメンバーの前で褒める
→褒めることで自信を持ってもらうとともに、メンバー間でのノウハウ共有につなげる

このような取り組みをすることで、先生方は一歩一歩の歩みを着実なものにしながら、安心して動いていくことができると思います。
詳しくは、「どのような体制で、どう連携していけばよいのか?」の記事をご覧ください。
(【参考記事】どのような体制でどう連携していけば良いのか?

今回のまとめ

いかがだったでしょうか。
今回の内容をまとめると、意識のバラつきに対応するためには、まずは意欲があるけど何かの要因で動き出せていない先生からアプローチすること。そして、アプローチの仕方としては、心理的ハードルを取り除くとともに、具体的な動き方のイメージまでつけさせてあげることが大切だというお話をしました。

また、心理ハードルを下げる点について以下2つの観点を共有してきました。
①実は探究活動はやっていることだと自覚化させる
②スタンス転換を促す
-先生は生徒といっしょに考え、サポート伴走する役割
-うまくいかなかった経験は学びにつなげればいい

今回のお話が、さまざまな先生方と連携していくための参考になれば幸いです。

(執筆:神原洋子/トモノカイ)

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