オンライン授業が日常になって大学生が感じたこと

オンライン授業が日常になって大学生が感じたこと

秋色に輝く並木道の写真

コロナ禍で変化した大学授業の“新しい習慣”

2020年は様々な業界・領域で歴史的な年になったことだろう。新型コロナウイルスが猛威をふるい、あらゆる生活習慣が変化を余儀なくされたからだ。未だに続くコロナ禍は、学校現場、とくに大学にも大きな影響を与えている。

中国に端を発した感染拡大は2020年初頭に日本にも伝播。2月には政府・自治体の緊急的な対応が進んだ。春休み前から全国の小中高校が一斉休校したことは記憶にも新しいことと思う。

そうした動きに同調して大学においても卒業式・入学式が中止され、授業はオンライン化が進められた。この流れは小中高校の登校が再開された6月以降も継続し、多くの大学で前期は「遠隔授業」を中心に実施された。

季節は秋へと移り、始まった後期。感染対策を講じながら徐々に対面授業を再開する動きが見え始めている。入試以来、一度もキャンパスに訪れたことがないという新入生も珍しくない状況で、ようやくという想いを持つ人も多いだろう。

文部科学省が2020年8~9月に実施した調査によれば、後期は2割近い大学が全面的に対面授業を実施し、8割の大学が「対面」と「遠隔」を併用するという(全国の国公私立大学・短期大学、高等専門学校あわせて1060校への調査)。

「大学等における後期授業の実施方針等の調査について」(文部科学省)

後期授業の方針(「大学等における後期等の授業の実施方針に関する調査」(文部科学省)よりTHINK TANQ編集部が作成)
後期授業の方針(「大学等における後期等の授業の実施方針に関する調査」(文部科学省)よりTHINK TANQ編集部が作成)

オンライン授業を受ける大学生のホンネ

大学における“新しい習慣”として、すっかり当たり前になった「遠隔授業」。ここまで定常的・長期的に遠隔授業が行なわれるのは、通信制の大学以外では初めてだろう。実際のところ、受講する大学生の感想はどうなのだろうか。

比較的早い4月からオンライン授業を始めている東京大学。同学の話題を扱う専門メディア「東大新聞オンライン」では東大生に緊急アンケートを行なっている。

「回答者の7割「満足」も下級生は不満あり【検証:東大のオンライン授業①】」(東大新聞オンライン)

そのアンケートによると、「とても満足している」「まあ満足している」と回答した学生が69.6%と半数以上にのぼったという。さらに学年別の内訳を見ていくと、学部3、4年はともに8割以上が「とても満足している」「まあ満足している」と回答したのに対し、学部1年で5割弱、学部2年で6割弱の回答。年次が低いほど満足度が低くなっている状況が見えるとしている。

その背景としては、やはりキャンパス生活を体験できていない新入生を中心に、対面授業を切望する声が聞こえているのだという。

机の上のノートの写真

また、東京大学からやや遅れて4月30日から新学期を開始したのが慶應義塾大学。THINK TANQ編集部では、同学の情報工学科に通う3年生の桑名真結香さんに実際の感想などを聞いた。

――“オンライン授業”とはどういうものか教えてください。

インターネットでWEBサイトにアクセスし、学生ごとに指定されたID情報でログインして受講します。授業形式にも種類があって、慶應の場合は、授業の録画を見て受講する“オンデマンド”と、実験など先生とも双方向にやり取りができる“リアルタイム”があります。

オンデマンドは学生の都合に合わせて受講しますが、リアルタイムは従来の授業と同様に決まった時間に受講します。

――オンライン授業で数か月間過ごしてみて、感じたことは?

通学時間がないので、そのストレスは減りました。一限に遅れる心配もないですし。リアルタイムの実践的な授業も思った以上にスムーズにでき、挙手やコメントなどもできているので、あまり不便は感じませんね。

――オンライン授業と対面授業で受け方に違いはありますか?

対面授業の場合は授業中にわからないことがあっても、すぐに隣にいる友だちに相談できましたが、オンラインだとそれができません。そのぶん自分だけで課題をこなすので、力はつくと思います。

あと、先生の話もより集中して聞くようになりましたね。聞き逃すと聞ける相手が居ないので。

オンライン授業は大学生活をどう変えているか?

大学の講義室の写真

――メリットとして感じていることは何ですか?

通学時間が浮いた分、自分の時間ができることですね。読書やものづくりに取り組む時間を作りやすいです。あと、お金を使う機会が減ったので、金欠にもなりにくいことでしょうか。元々出費が多い人にとってはバイトもしづらい状況なので、大変だとは思いますが……。家でやりたいことがある人にとってはメリットが大きいと思います。

それからオンデマンド方式の授業の場合は、倍速再生もできるので効率よく学ぶことができます。その分、やはり時間を作れるのでいいですね。理解がイマイチだと感じたときは、何回も視聴して確認できるのもメリットだと思います。

――では、デメリットは何ですか?

やはり、友だちに会えないことですね。ずっと一人でPCに向かいっぱなしなので、コミュニケーション力が低下しているのを感じます……。話す速度とか、内容を考えるのが遅くなるとか。あと、運動不足になりますね。

それから、大学に通っているという実感も薄いですね。最初は比較的満足していた同級生たちも、6月くらいから大学に行きたいという人が増えてきました。キャンパスに一度も行けてない新入生はきついんじゃないですかね。

――交友関係は育めますか?

新しい友だちを作るのはかなり難しいと思います。学科のオンライン交流会とかも企画されたりしますけど、参加率はあまり高くありませんでした。顔出し(画面上に自分の顔を表示すること)を必須にしてたんですけど、初対面の人とオンラインで顔出しで交流するのは、ちょっと抵抗を感じますよね。

――当初はここまで長期化するとは想像していなかったと思いますが、最初から分かっていたら良かった事はありますか?

やはり、いつまでこの態勢が続くかということですね。前期がすべてオンラインになると分かっていたら、もう少し準備する内容を変えられたと思います。キャンパスに行くなら洋服が必要ですけど、オンラインで自宅にいるならラフな格好でいいわけですし。

あと、大学ごとに対応が違うのは納得が行かない部分もありますね。発表方法だったり、実施時期とかお金関係のこととか。

――学生の立場から見て、ウィズコロナ状況での授業はどうするのが良さそうですか?

授業形態としてはしばらくオンラインが続くのは仕方ないと思います。でも、オンラインだとしてもリアルタイム(双方向)&オンデマンドの混合がいいと思います。とくにオンデマンドは受講タイミングを選べて生活リズムを作りやすいので。

あとは、たまに任意で懇親会などを大学でやる、とかがあればいいかもしれません。オンライン授業はメリットも大きいと感じているので、うまくバランスが取れると嬉しいですね。

◇  ◇  ◇

賛否両論が挙がるなか、学生が大学生活に求めるものによって意見が変わってくるようだ。今回インタビューに答えてくれた桑名さんが周囲の友人にアンケートをとったところ、7割近くが通学不要や受講タイミングの自由さなどを理由に「満足」と答え、3割の「不満」と答えた人は、大学での人脈や人間関係の構築を期待しているとのことだった。

必要性がささやかれながらも、なかなか浸透はしてこなかったオンライン授業。コロナ禍によって一気に浸透したものの、その変化のスピードが早いがゆえに、体制の不備や公平性など仕組みが追いついていない部分もあるようだ。

今後、ワクチンが開発されたとしても、新しい感染症への備えという意味ではオンライン授業は部分的にでも引き続き行なわれていくことだろう。各大学では速やかに振り返りを行なっていただき、次年度に向けて活かしていただけたらと切に願う次第である。

(執筆・取材:小川史晃/THINK TANQ編集部)

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